とある事務所の将棋紀行

将棋の好きなアイドルが好き勝手に語るみたいです。

アイドル達の戦型解説  横歩取りってどんな戦型?(前編)

 

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アナスタシア
ミナミ、ドーブラエ ウートラ!

美波
あ!アーニャちゃん、おはよう。最近、気分が良さそうだね。

アナスタシア
ダー♪ ミナミのヴァルキュリア、とってもクールでした。今も写真とっておいてますね。

美波
ありがとう。でも、初めての体験だったから少し緊張しちゃった。

アナスタシア
パニャートナ、ミナミの初体験だったんですね。アーニャ、感動です。

美波
アーニャちゃん、言い方…

アナスタシア
シト?初めてのこと、日本語で「初体験」と言うと習いました。おかしかったですか?

美波
おかしくはないんだけれど…。そうだね、他には何かあったの?

アナスタシア
そうでした!もっとすごいこと、ありましたね。ゲームでミナミをスカウトしました。
クパゥニク…水着、キレイでしたね。

美波
そういえば、何か盛り上がっていたみたいね。

アナスタシア
そうです。3000円でミナミを買いま――

美波
アーニャちゃん!その言い方はダメですっ!

アナスタシア
ンー、難しいです。

美波
また、日本語教えてあげるから…。キリがない気はするけれど。

アナスタシア
日本語、ふわふわしていますね。形がみえにくいです。

…そういえば、将棋でもふわふわした言葉がありました。えーと…「横歩取り」?

美波
横歩取りは戦型の一つだけど…ふわふわしてるってどういうこと?

アナスタシア
気になって、スマホにとっておきましたね。これです。

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美波
名人戦の第1局、竜王戦1組、棋王戦の第4局…かな?

アナスタシア
ダー。…ですけれど、ヘンです。後手が美濃囲いの振り飛車だったり、ヴィトュヴァ…決戦だったり、よくわかりませんね。これが、同じ戦型なのですか?

美波
うーん……横歩取りってプロでも難しい戦型だから、具体的に「こういうものだ」って示すのは難しいかな。

今の形に至るまでにもいろんな紆余曲折があったし…私が生まれる前から指されてた形が関わってくるから、ちょっと解説は難しいかも。

アナスタシア
ニチェボー、そうですか……。

 

??

ピピピピピ!ウサミン星から電波を受信!困ってるアイドルを2人観測!ただちに助けます!

 

アナスタシア
シト!?

美波
えっ!?

……あ、菜々さんでしたか。どうしたんですか?

菜々
ふっふっふ…どうやらお困りのようですね。
ですが、ナナが来たからもう大丈夫です!

アナスタシア
シト、どういうことですか?

菜々
昔の形ならナナとウサミン星のデータベースの領域ですっ!

横歩取り居飛車党だと自然には避けられない戦型ですから、経験も沢山ありますよ!

アナスタシア
ハラショー!

菜々
ですから、美波さんがカバーしきれない部分はナナが教えるということで、いいですか?

 

美波
私はいいですけど……

菜々
ということでアーニャちゃん、時間をとってもらえるようプロデューサーとお話しに行きましょう!

アナスタシア
ダー!

 

美波
行っちゃった……。

 

大丈夫かな……。

 

 

(数時間後、事務所の一室にて)

 

ということで、ここからはナナの講座、横歩取り編をお送りします。キャハ☆
アーニャちゃん、よろしくお願いしますね。

「パジャルースタ、よろしくおねがいします」

アーニャちゃん、目がキラキラしてます…若いって、いいですねぇ。

「今日は、ナナがウチーチリ…先生、ですね。ミナミより若い先生…すこし、ふしぎです」

え…?美波ちゃんは19歳だから……

 

そ、そうですね!現役JKが先生を務めますっ!キャハ☆

 

 

……さて、横歩取りの最初の形はアーニャちゃん知ってますか?

「ダー、いちおう、ですけど。こうですよね?」

 

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(初手から)
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △8四歩 ▲2五歩 △8五歩
▲2四歩 △同歩  ▲同飛  △8六歩 ▲同歩  △同飛
▲3四飛

 

そうですね、これが横歩取りの基本図です。
先手が▲3四飛と横にある歩を取るから横歩取りと言うんです。

でも、後手は2手目に△8四歩と突けば矢倉や角換わりにできるので、後手が誘導しているんですね。「横歩取らせ」という棋士もいるくらいですね。


「シト、自分からわざと歩を損するのですか?プラウダ リ エータ?」

…昔は『横歩3年の患い』と言われていて、▲3四飛は先手の疑問手だと言われていたんです。
実際、この飛車はこのまま働かせることが難しくて、狙われやすい不安定な位置なんですね。

2筋に戻すのにも、▲3六飛―▲2六飛で2手かかります。その上、後手は歩手を二枚手持ちにして△2八歩や△3八歩のような攻めの手段もある…。
つまり、後手は

『1歩損しても、先に動いて有利にしよう』

という戦型なんです。この方針は長い歴史の中、ずっと共通していますね。

「ンー、具体的には、どうするのですか?」

いくつも手段があるのですけど…。
今では水面下の変化になりましたね、一部だけ紹介しましょうか。

 

 

1、後手超急戦

 

・△3三角(4四角)急戦

 

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(基本図より) △8八角成 ▲同銀 △3三角(△4四角)

ここで角交換をしてから再度角を打つ。狙いは後手の飛車先突破ですけれど、単純ゆえに受けにくいんですね。

「ンー、▲8七歩で、大丈夫ではないのですか?」

それは8筋は受かりますけど……

△7六飛(金取り)▲7七銀 △2六飛(桂取り)▲2八歩

 

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となって、先手は1歩得も消えて2八歩を打たされ、いいところがないんです。
これなら、横歩を取らない方がいいくらいで…。

ということで、急戦に対する先手の方針は『攻め合い』になります。

▲7七角や▲7七桂が候補手ですね。変化の一つがこちら。

 

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(△3三角から)
▲7七角 △同角成 ▲同桂 △8九角 ▲8七銀 △同飛成 
▲同金 △6七角成

 

飛車取りですけれど、▲3六飛と逃げておいて後手から早い攻めがありません。
先手は、▲2二歩や▲6五桂など、厳しい攻めがいろいろあります。
後手に竜や馬を作らせても、先手の攻めがより早ければいいわけです。

「パニャートナ、先手がよくなるんですね」

ただ!気をつけなくてはいけない手が色々あります。

△3三角を打つ前に、△3八歩と打つ手があるんですね。▲同銀とさせてからこの手順をすると…

 

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先手玉が △4八銀 ▲4八玉 △5七馬 までの詰めろ飛車取りになってしまうんです!

「ウ―ジャス!これでは負けてしまいます!」

そう、これが横歩取りの恐ろしさなんです。生と死が紙一重…。

△3八歩を打たれた場合、別の手順で先手良しとされていますね。
こういう落とし穴がたくさんありますから、気をつけないといけません。

「ダー、分かりましたね」

 

 

・△4五角戦法、

単純に突破を狙っても上手くいかなかったので、手順が複雑になっていきます。

 

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(基本図以下)△8八角成 ▲同銀 △2八歩 ▲同銀 △4五角

 

△4五角戦法は先手の飛車を狙いつつ△6七角成▲同金△8八飛成の突破が狙いですね。
△2八歩▲同銀の交換を入れて、▲2八飛と飛車の横利きで受ける筋を消しているのが細かいところです。

谷川浩司九段が若手時代にこれを用いて勝ちまくっていた印象がありますねぇ。

「オー、光速流ですね」

ただ、その後出てきた棋士が『羽生世代』なわけで…。若手だった羽生さんや佐藤さんが、4五角戦法を含め後手急戦を駆逐していったんです。

『羽生の頭脳』にある横歩急戦の内容と結論の9割以上は、今でもそのまま通用しますからね。

「ミナミに91手組を教えてもらったときも、羽生さんが関わってましたね。昔からなのですか。すごいです…」

最善の手順でこんな感じになります。

 

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▲2四飛 △2三歩 ▲7七角 △8八飛成 ▲同角 △2四歩 
▲1一角成△3三桂 ▲3六香

 

この局面が、

 

1)後手歩切れ

2)▲3三香成の攻めが早い

3)6筋を突破すると、▲6二歩、▲6四歩のような返し技がある

 

という点から「先手わずかに良し」とされてますね。

ただ……

「シト?」

ここまでで変化もできる上に、この先にも△8七銀、△6六銀や△3六同角といった選択肢が難解かつたくさんあって、ナナも正確に勝ち切る自信はないんですよ。
変化を網羅しようとしたら、おそらく本1冊じゃ足りない量なので…。

「じぶんが、強くならないとダメですか」

定跡は、沢山の棋士の対局や研究の上にありますから。

この手順だって、ナナ一人の読みだけで到達できる領域じゃないです。

 

 
・相横歩取り

 

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(基本図以下)△8八角成 ▲同銀 △7六飛

 

このあたりから、急戦、持久戦両方をみた戦法に移っていきます。

先手が横歩を取った瞬間に△7六飛と取り返すと▲2二角成で一巻の終わりです。
でも、△8八角成▲同銀から△7六飛は成立します。これが相横歩取りですね。

「どちらも、よく似た形ですね」

その通りで駒の損得もないのですけれど、先手だけ銀が動いているので手得なんです。これをどう生かすかが先手のテーマですねぇ。

 

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▲7七銀 △7四飛 ▲同飛 △同歩 ▲4六角

 

自然に▲7七銀から決戦にするのが主流なんですけど、理解するのは難しすぎますねぇ…。詰む詰まないまで研究されている分野です。

後手の変化も多くて 2013年の棋聖戦第2局 渡辺―羽生戦で、後手の羽生さんが相横歩取りを採用して勝っていますね。これは▲7七桂でした。

 

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▲7七桂 △3三金 ▲8四飛 △8二歩 ▲5八玉 △2六飛 ▲2八歩

(飛車を追いつつ▲1五角の王手飛車を消した△3三金が、悪形というのが先手の主張です)

渡辺さんも決戦の変化を避けたので、難しいところはまだまだあるのでしょうね。

「どうして後手は使わないのですか?ヤーニパニマーユ…分かりません」

後手は動いた割になかなか良くならない方が多いのですよ。今の棋士はほとんど採用していないのが現状ですね。
電王戦Ponanza―村山七段戦では、先手▲7七歩から持久戦にして抑え込み勝ちをしていますし…やはり、後手に苦労が多いですね。

横歩取りという戦型は、こういった危険な変化の上に成り立っているんです。
△2三歩型、△3三桂型、△4一玉型……他にもまだまだあるんですよ。

「これを覚えるのは、大変そうですね」

さっき話した「羽生の頭脳」以降も多くの棋士が本を出していますから、気になるなら勉強して、練習してみるのがいいと思いますよ。
少し前まで、飯島七段が将棋世界で急戦の解説を連載されていましたし。

勉強すれば一撃必殺の武器にできますけれど、初心者にはハードルが高い戦型なんですよね…。

 

2、 △3三角戦法へ

 

ところでアーニャちゃん、今の横歩取りと比較して、さっきの戦型ってどうでした?特に、後手玉の周りとか。

「ンー、そうですね…どれも囲ってないですね。居玉です」

そうなんです!▲3四飛をいじめると、後手は居玉のまま戦いになるんですね。
それが響いて勝ちにくい…そんな認識に至ったわけです。

「『居玉は良い玉』と、カエデは言ってましたね?」

それは……ダジャレですよ。
藤井システムとか、例外はありますけど。

とにかく、横歩取りにおいては後手が
『1回囲ってから戦いを起こす』方針になるんですねぇ。
ここから今に至るまで、△3三角戦法が席巻していくことになります。

「ということは、美濃に囲うんですか?クラスィーヴィ…美しい形だと、ウヅキに教わりました」

いえいえ、それは20年以上先の話です。空中戦の方ですよ。

「…………シト?」

え、内藤流空中戦法…知りません?「おゆき」や「図式百番」の内藤國雄九段…。

「アー、名前は知っていますけど…」

そうですか、もうそんな時代なんですねぇ…。

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(基本図から)△3三角


いえ、正確に言うと内藤九段が最初に指したのは40年以上前ですね。
当時は勘所がつかみにくくて、特定の棋士の戦法でマイナーだったんです。

それが、急戦がうまくいかなくなって、羽生世代が△3三角戦法を採用し始めた…これがどういうことか、分かりますか?

「どうなるのですか?」

恐ろしいまでに定跡が発展します。道が整備されて、みんなが指せる戦型になるんですね。

「なるほど、です」

 

 

・△8四飛中住まい

 

 

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一番最初は、中住まいから始まります。△3三角から△5二玉―7二金―6二銀ですね。
先手は飛車の位置を戻すのに手損していますから、後手が先に仕掛けやすいわけです。

「どこから攻めるんですか?」

1番多いのは、先手が▲3六歩を突いた瞬間に△8六歩▲同歩△同飛。
次に△7六飛で歩を取り返しつつ、戦いを起こす狙いです。
先手も▲3五歩から攻め合うのですけれど、なかなか優秀な攻め筋なんですね。

 

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△8六歩 ▲同歩 △同飛 ▲3五歩 △8五飛

(8筋攻めと、△3五飛の両ねらい。いろいろな展開がありますが、後手の相当やれます)

 

先手からしたら一方的に悪くなっては横歩を取る意味がないので、△7六飛を防ぐ作戦を考えることになります。

それが『鏡指し』ですね。

「ズィエールカラ…鏡、ですか?」

ええ、図を見れば分かると思いますよ。

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 (手順一例、△3三角より)※長いので、流しても大丈夫です。

▲3六飛 △8四飛 ▲2六飛 △2二銀 ▲8七歩 △5八玉 
▲5二玉 △7二金 ▲3八金 △6二銀 ▲4八銀 △1四歩 
▲1六歩 △9四歩 ▲9六歩 △7四飛 ▲7七角 △同角成
▲同桂  △3三桂 ▲4八銀 △2五歩 ▲6六飛 △2四飛
▲2七歩 △8四飛 ▲5六飛 △7四歩 ▲3六歩

 

重要なのは、すぐに▲3六歩を突かないことです。端歩も受けて、攻めの手がかりを作らせない。
後手は動けないので色々試行錯誤しますけれど、完全に受けとめてしまいました。

先手は、左右ほぼ同じ形でしょう?真ん中に鏡を置いたみたいに対称だから鏡指しです。
飛車で▲7六歩を守っているので、安心して▲3六歩を突けるんですね。

後手は3筋に歩がないので、▲3五歩―▲3四歩と突けば攻めになります。
そして、持久戦になれば後手の手得は意味がなくなる…というわけですね。

「オー、こんな手があるんですね!」

こういう指し方や定跡は素晴らしい手順の宝庫ですけれど、どんどん水面下に埋もれていってしまうんですよ…。
アーニャちゃん含め、今の10代で知ってる子は少ないと思うんですよね…。

「シト?ナナ、17歳ですよね?」

あ…そ、そうですよ!ナナはウサミン星のデータベースで勉強しているので、こういう変化を知っているんです。キャハ♪

「ハラショー!」(パチパチ)

……コホン、ということで、後手は更に工夫を求められます。
ここで、見慣れた囲いが登場しますよ!

 

・△8四飛(中原囲い4一玉型)

 

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 同じような囲いでは歩損が響くということで、後手は「堅さ」を求めます。それが「中原囲い」なんですねぇ。
元々は相掛かり用の囲いでしたけれど、横歩取りに応用したんです。

特徴はとにかく、横歩取りに「堅い」という概念が生まれたことが大きいです。右にも左にも逃げられる上に、大駒交換してもそこそこ耐久力がある。優秀なんですよ。

「では、これで後手がいいんですか?」

それが…玉が4一になったために、歩のない3筋がより弱点になってしまったんです。
ここを突かれると、岩のヒビを広げていくような感じで脆く崩れてしまうんですねぇ…。

「ニチェボー、苦しいですね」

横歩取りは、後手の苦労の歴史ですよ。手になると勝てるんですけれど。


……困ったようですけれど、ここから横歩取りは一気に進化していきます!
横歩取りの大革命がるんですっ!

その名も、△8五飛戦法!

 

「リヴォリャーツィヤ、革命ですか。ワクワクしてきますね」

ここからは最新型まで繋がっているので一気に追うことになるんですけど……。
ちょっとナナには……。

「シト、何か問題があるのですか?」

残念ながら、データベースもナナも、最新型の推移とか結論には疎いのですよ。

「ジャールカ、残念です」

ここから先は美波ちゃんの領域だと思うので、今回はここまでで。

今度、後半戦をここからお願いしてみますね

「分かりました。ナナのレクツィア、講義も勉強になりましたね。横歩取りは手数が短いです。でも、その中にたくさんの手が眠っていました」

 

わずかな手順の違いで昔の形が復活する…なんてこともありますから、様々な定跡や手筋を覚えておく…というのは有用なことだと思います。

棋士の方々が対局を通して拓いてきた道ですから、「先手良し」の結論だけ知って使ってみると勝ちきれなかったり…なんてことはよくありますね。

横歩取りは知識が重視されがちですけれど、薄い玉を指し回す感覚や棋力も非常に大切な戦型です。

……だからこそ指しこなすのが大変で、敬遠されがちな戦型になっているとも言えますね。

「すごく、ラスコーシヌイ…カレイな世界でした」

かの羽生さんも好きな戦型は横歩取りだそうですし、独特な魅力がある戦型ですよ。
それが分かってもらえたら、ナナは嬉しい限りです。

 

それでは、今回はこのへんで。ありがとうございました!

「バリショーエ スパシーバ!ありがとうございました、ですね」

「…………」

どうかしましたか?

「アー……ナナ、一つ聞いてもいいですか?」

はい、何でしょう?

「ナナのズヴェズダ……アー、ウサミン星は、どこにあるのですか?」

……え?

「ナナの歌に、『電車で向かえば1時間』とありました。そんなに近いのですか?ずっと不思議でしたね」

あ、あぁ……えーとですね……あれです!銀河鉄道999みたいな!

「……シト?」

え、伝わりませんか?えーと……。

 

ウサミン星は魔法の電車に乗って1時間で着く、メルヘンな所なんですっ!

場所がどこかはヒミツですよ。『地上の星』……なんちて☆

「…………」

(これじゃあダメでしょうか……。ナナはどうすれば……)

 


「……ハラショー!そんなところがあるのですね!いつか、行ってみたいです」
(キラキラ)

 

し、しばらくは無理ですね……。アハハ……。
(よ、よかった……)

 

 

 

(翌日)

 

美波
アーニャちゃん、おはよう!菜々さんと講座、どうだった?

アナスタシア
ドーブラエ ウートラ!
ミナミ、昨日はすごいことを知りましたね!

美波
菜々さんの講座で、何かあったの?

アナスタシア
ダー。

 

ズヴェズダ…星は、地上にありました!

 

 

 

美波
…………え?

 

 

 

(了)

 

参考対局

 

第74期名人戦第1局 羽生―佐藤天 戦

第29期竜王戦1組  羽生―豊島  戦

第41期棋王戦第4局 渡辺―佐藤天 戦