とある事務所の将棋紀行

将棋の好きなアイドルが好き勝手に語るみたいです。

安部菜々の一人語り  永世竜王までの道のり、竜王戦30年史(前編)

 

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 はーい、ウサミン星から電波を受信してやってきました安部菜々ですっ!キャハ☆あ……ちょっと引かないで下さい、まだテーマにすら入ってないですからー!


 はい、というわけで今回は羽生さんと竜王戦についてのお話です!竜王戦は今期の七番勝負で30期、羽生永世竜王(資格保持者)の誕生となったわけですけど、これまでの戦いを振り返るにはいい機会かなーと思ったんです。2月13日は羽生善治竜王井山裕太七冠の国民栄誉賞の授与式でしたし、1996年2月14日は羽生七冠が誕生した日!ということで、ウサミン星のデータベースから羽生さんを中心に、お気に入りの対局を紹介していきたいと思います。よろしくお願いしますね、キャハ☆

 さっそく始めたいんですけど、30年分はあまりにも長くてですね……2回に分けることにしました。1クール目はナナが担当しますけど、2クール目は別のアイドルにお願いしてあるそうなので、楽しみにしててくださいっ!

 

第1期 竜王戦の誕生

 竜王戦の前は「十段戦」という棋戦があってですね、これが発展的解消をして1988年度に竜王戦が生まれました。羽生さんは十段戦にも出ていましたけど、本当に新人の頃だったので十段リーグの出場経験はないまま竜王戦へと移行しています。

 羽生五段(当時)は4組を優勝し、決勝トーナメントに進出。……この時点で十分すごいことなんですけど、3組2位の島六段(当時)に敗れてますね。島六段はそのまま勝ち上がり、大山名人も下して七番勝負へ進出します。

 第1期は少し変則的で、十段位を持っていた高橋道雄十段は反対側の山で準決勝からの登場となっていました。しかし1組2位で勝ち上がった米長九段に敗れ、七番勝負は米長―島 戦となります。決勝戦が七番勝負というのは、叡王戦でもこれから行われるところですねぇ。30年ぶり、というわけです。

 七番勝負は島六段の4勝0敗、意外にもストレートで終幕。アルマーニのスーツを着てタイトル戦を指したエピソードなどが有名ですね。「島研」で有名な島六段ですけど、翌年はその島研対決となります。

 

第2期 羽生竜王の誕生

 3組を優勝した羽生五段は南王将、大山十五世名人、挑決では森下五段(当時)を下して初のタイトル挑戦となります。デビューからタイトルを期待されていた羽生さんですけど、ここまでタイトル戦に絡んだことはありませんでした。七番勝負はもつれにもつれ、1持将棋を含め第8局まで行われました。結果は4勝3敗1持将棋で羽生六段の勝利、初タイトル竜王位を、19歳にして奪取!とにかく、昔から羽生さんは強かったのです。

 これは当時最年少の記録で、のちに屋敷さんが18歳で棋聖を奪取して更新していますね。藤井五段がそれよりも早くタイトルを獲るかも注目されるところで、ナナよりも若いタイトルホルダーの可能性も……と、話が脇道にそれました。次にいきますよ!

 

第3期 光速流の登場

 翌年に挑戦者になったのが、谷川浩司二冠でした。このときすでに棋界の第一人者となっていた谷川二冠は「光速流」と呼ばれる終盤術で羽生竜王を圧倒します。例えば第3局のこの局面。羽生竜王の勝負術で怪しくみえますが、▲6一飛が光速流、最短の一手です。

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 ……これ、長手数の詰めろになってるんですよ。受けると▲6七飛成で金を取られますから△8八銀と必至を掛けましたけど、▲3一飛成△同玉▲5三角以下変化は多いですが後手玉は捕まっています。
 こういった読みの正確さ、深さが光速流のベースになっていますね。羽生竜王は1勝4敗で失冠します。

 

第4期 1組から2組へ

 第4期で羽生さんは1組で脇七段(当時)に負け、敗者復活でも南王将に敗れ2組へ落ちることになります。このときの対局は、羽生さん勝勢からの大逆転負け。「3手頓死」と呼ばれるものですね。

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  △2七桂が大悪手で、▲2九銀で後手投了。以下は△1九玉▲2八銀引までの詰みです。かえて△7六角なら「先手玉が」詰んでいました。

 挑戦者は森下さんでしたが、4勝2敗1持将棋谷川竜王の防衛となっています。

 

第5期 復位

 2組を勝ち上がった羽生さんは挑戦者決定戦で佐藤康光六段(当時)を破り、七番勝負の舞台へ戻ってきます。第1局の△5七桂、第6局の△6九馬など谷川光速流の名局もある期なんですけど……フルセットの激戦の末に、4勝3敗で羽生さんが奪取しました。

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(歩を成れる地点に桂打ちが好手。先手は飛車と銀を渡す展開ですけど、△6八銀!からの詰みが生じています)

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(▲4四歩~▲4三歩成が詰めろにならない、読み切りの絶妙手)

 この時期のお二人の対局は、矢倉と角換わりが圧倒的に多いです。この時代はまだ一手損角換わりも、横歩取り△8五飛も、ゴキゲン中飛車も指されてないですからね。

 ナナはこの頃の棋譜が大好きなんですけど……「知らない」って言われることもあって、ちょっと寂しいですねぇ。

 

第6期~第8期 羽生―佐藤 3期連続七番勝負

 

 翌年の挑戦者は、佐藤康光六段。2期連続で挑戦者決定戦まで勝ち上ってきたわけで、当時からかなりの実力者だったことが分かると思います。そして七番勝負は、4勝2敗で佐藤六段の奪取。1回目のタイトル戦で羽生さんを下した人って、そうそういないんですよ。羽生世代の中では、2番目にタイトル獲得数が多い方ですからねぇ……。

 第7期は羽生さんが七番勝負に挑戦者として戻ってきて、リターンマッチを挑みます。4勝2敗で再奪取。このとき史上初の六冠王を達成しています。

 

 第8期は佐藤さんが挑戦者となって、3期連続の同一カードとなります。……当たり前のように挑戦者に名前が出てますけど、全棋士参加棋戦ですからね!?

 4勝2敗で羽生竜王の防衛。六冠を堅持するとともに、数か月後の王将戦も奪取し七冠を達成していますね。このときの第6局は米長流急戦の熱戦で、羽生さんがこのカードのベストワンの一局にあげています。

 

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(難解な攻防が延々と続いて、161手で先手の勝ち)

 

第9期 谷川九段のリターンマッチ

 

 挑戦者は谷川九段、三度目の羽生―谷川七番勝負です。

 この期で有名なのは、第2局、谷川九段の△7七桂ですねぇ。

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(いくつも駒が当たっている中で、駒台から桂を捨てた△7七桂が棋史に残る一手。どう応じても、先手玉への速度が速くなる)

 とにかく光速流が冴えわたって、4勝1敗で奪取。ここから数年は羽生さんが本戦に絡むことはありません。

 

 第10期は真田圭一六段でしたが、谷川竜王がストレートで防衛。

 羽生世代の台頭が目立ちますけど、その前は谷川さんの時代だったわけで……とにかく、谷川さんだってとてつもなく強い方だということは覚えておいてほしいですね。

 

第11期~藤井竜王の誕生

 1998年、第11期。将棋ファンがよく知るあの人の登場です。藤井猛七段(当時)。藤井システムを完成させた藤井さんの快進撃は止まりませんでした。谷川竜王相手に、ストレートで奪取!

 今のような藤井システムの局面になることは少なくて、居飛車側も試行錯誤しながら形を変えていたのですけど……とにかく「藤井さんの指す四間飛車」が強かったんです。

 第3局や第4局の終局図はこちら。穴熊左美濃が、姿焼きに近い状態ですね。

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 とにかく、序中盤で差がついてしまうんです。トッププロの対局で、これをやってのけたわけですからね!?未だにファンが多いのも頷けます。

 

 第12期は鈴木六段の挑戦を受けます。鈴木六段は振り飛車党で、石田流とゴキゲン中飛車を中心に指していましたが……藤井竜王居飛車を採用して、対抗型に持ち込みます!ゴキゲン中飛車に対する超急戦がタイトル戦で出たのもこれが初めてですね。

 藤井竜王は4勝1敗で防衛、そして有名なシリーズへ続くわけです。

 

 

第13期 一歩竜王

 

 挑戦者は羽生四冠。この七番勝負は、羽生四冠が居飛車穴熊を放棄します。

 

第1局 袖飛車      藤井勝ち

第2局 右銀急戦     羽生勝ち

第3局 地下鉄飛車    藤井勝ち

第4局 左美濃      藤井勝ち

第5局 棒銀       羽生勝ち

第6局 ▲4五歩早仕掛け 羽生勝ち

第7局 左美濃      藤井勝ち

 

 ……実は、船囲いの急戦で3勝していたんですね。勝ちにくいとしたものですけど、中終盤の正確さや勝負術が抜きんでているからでしょう。

 しかし左美濃などでは藤井システム調の玉頭戦に屈しています。有名な一歩竜王も、玉頭を攻めるための一歩が僻地にあった……という手です。

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(先手の攻めが切れかけた局面、繋ぐための1歩が8六にありました。30手前に突かれた歩です)

 

 このあたりは時代を反映している感じですねぇ。

 

第14期 三度目の復位

 翌期も、挑戦者決定戦に羽生四冠は進出します。……当たり前のように名前が出ていることに、感覚がマヒしそうですよ。この期の挑戦者決定戦は、木村一基五段(当時)との対戦。

 三番勝負の第1局では羽生四冠勝勢の終盤で、一手詰みを見逃して負ける「一手頓死」の大悪手を指しています。羽生将棋の中で、一番のポカと言えるでしょう。第4期の「三手頓死」も含めて、同じ棋戦で極端な逆転負けが2局もあるのは偶然とはいえ少し驚きです。

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横歩取り△8五飛から先手勝勢の局面、▲6四玉と逃げた手が大悪手。△6五飛までの一手詰で先手投了)

 しかしこの挑決は、第2局、第3局を連勝して羽生四冠が挑戦者となりました。
 ……やっぱり羽生さんは強かったです。

 

 本戦では4勝1敗で奪取。藤井システムへの対策も次第に生まれていった頃ですけど、やはり居飛車急戦で2勝しています。強い人は玉が薄くても勝てるんですね、真似できませんけど!

 

 

第15期 千日手入玉

 挑戦者は阿部隆六段。第1局は竜王戦恒例の海外対局で台湾で行われたのですけど、2連続千日手で決着がつかないまま帰国しています。
 他にも有名なのは、入玉模様の将棋で257手かかった対局があります。羽生さんの駒台に歩が14枚!他の駒も合わせて21枚もあるので、駒台に乗りきらないですよね……これ。初期局面より枚数が多いじゃないですか。

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(指せる手はたくさんありますけど、▲1六桂や▲3五金などの攻めを受けきることができないため、後手投了となりました)

 シリーズはもつれフルセットの末に、4勝3敗2千日手で防衛しています。カド番に強い羽生さんは、この頃からずっとという感じです。

 

 かけ足で15期分を追いかけましたけど、いかがでしたか?藤井竜王の誕生が20年近く前という事実にナナはショックを受け……じゃなくて!

 ここまでで竜王位の獲得は通算6期。あと1期で永世竜王の資格を得ることができる状況に、この時点でなっていたんですねぇ……。裏を返せば、ここからが長いってことでもありますけど。

 さて、ナナの昔話はここまでにして、次は今に至るまでの話を他の子にお願いしてありますので、楽しみにしててくださいね!

 お相手はウサミンこと安部菜々でした!ぶいっ☆

 

 

(了)