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とある事務所の将棋紀行

将棋の好きなアイドルが好き勝手に語るみたいです。

土屋亜子の詰将棋紹介 ~江戸時代から現代まで~

 

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どーもどーも!土屋亜子でーす!

今回はアタシが担当するんで、大船に乗ったつもりでお願いしますわ! まぁ、お仕事が増えるのは大喜びなんですけどねー。Pちゃんに何か奢ってもらおっと!

 

今日やる内容はちょっと趣向を変えて、詰将棋の話をしようと思いまーす!

 

ホントはもっと早くやる予定やったんだけど、Pちゃんが具合悪くしてな、企画が遅れてしもうたそうな。「時は金なり」って言うのになー。

まぁ、偶然にも詰将棋選手権の日になったからよしとしましょうか!

もとは、動画の投稿に間に合わせるつもりやったんやと。

宣伝は基本!ということで置いときますね。

 

 【第八次ウソm@s祭り】346プロの細かすぎて伝わらない将棋名シーン集 ‐ ニコニコ動画:GINZA

 

まぁ、これはアタシが演じているだけなんやけど、棋士やアマチュアで詰将棋を作っている有名な人は多いのよ。内藤九段、谷川九段、浦野八段、二上九段…。 でも、手順が長かったり難しかったり、何をやってるのかよく分からない人って多いんじゃないかと感じるわけです。 というわけで詰将棋がどういうものか、また詰将棋ならではの手筋を解説していきます!

 

 ・基本ルール

 

まず、詰将棋のルールからね!

駒の動きとか、基本は本将棋と一緒!ただ、そこに追加ルールがあるというわけ。

 

・攻め方は、王手の連続で詰ます

・攻め方は、最短手順で詰ます

・玉方は、最長最善手順で逃げる

・玉方は、無駄な合い駒をしない

・攻め方の持ち駒以外の駒は、全て玉方が使える

・攻め方は、途中で入手した駒を使うことができる(使いきらないといけない)

・基本、詰みに関係ある駒し置けない

 

まぁ単純に言うと、「どっちも最善で指し合って、最終的に詰ます」って感じやね。

 

 ・詰将棋の歴史

 

詰将棋は歴史が古くて、記録がある最古のものでも江戸時代に遡るんやな。

今の本将棋のルールが出来上がったのが1600年頃、つまり関ケ原の戦いくらいと言われていますね。

大河ドラマ真田丸」に将棋のシーンがあって盛り上がってたけど、「酔象」って駒が混じってたのね。
あれは本将棋の一歩手前、「朝倉将棋」と言われるものらしいですわ。

 

とにかく江戸時代の初期に本将棋は完成していて、徳川家康が将棋を保護した結果、華道や茶道と同じような家元制になるのね。「名人」の歴史もここから始まるわけ。

大橋家と伊藤家という2流派の世襲制になるんやけど、保護の見返りに名人が「詰将棋を幕府に献上する」って慣習があったのね。 この中で、詰将棋が「作品」として洗練されていくわけやな。

 

有名なのは7代名人伊藤宗寿の「将棋無双」、その弟の伊藤看寿の「将棋図巧」。

江戸時代の詰将棋黄金期…と言えるかもしれんな。難解かつ構想が非常に美しくて、特に図巧は最高傑作と今も言われてるのよ。本人も将棋が強かったんやけど、兄の宗寿から名人を受け取る前に亡くなってしまったらしい。…悲劇の天才やな。

 

この後、詰将棋を献上する慣習そのものが消えてしまったらしくて、詰将棋の創作が盛んになるのは戦後になってからやな。今では「詰将棋パラダイス」とか、詰将棋専門の雑誌もあるくらいや。

 

ざっとこんな感じやけど、詰将棋ならではの筋を紹介していきますわ。

 

 

・不成の手筋(銀、桂、香)

 

実戦でも時折現れる手やけど、銀や桂みたいな小駒は不成の方がいいことがあるのね。 例えば、こんな形。

 

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 ▲2三桂不成△2一玉▲1一香成まで3手詰

 

ここで▲2三桂成は詰まない。でも▲2三桂不成なら、香車と桂馬の両王手で△2一玉と逃げるしかない。そこで▲1一香成で詰みってわけやな。

こういう、実戦ではなかなか現れない、筋が詰将棋では多いから頭の片隅にでも置いといてな。

 

 

・不成の手筋(飛、角、歩)

 

これは実戦ではほぼ現れんね。谷川九段が指したことあるらしいけれど昔の話やし、王将戦(佐藤―渡辺戦第1局)の変化にあった…とか、ごく稀な筋や。

これらの駒は、成った方が上位の働きをするから普通は成るべき駒なんやけど、唯一、不成が活きる変化があるのね。それが、「打ち歩詰め」。

 

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▲2三歩不成△1一玉▲1二歩△同玉▲3二竜△1一玉▲2二竜まで、7手詰

 

この局面で▲2三歩成は△1一玉で打ち歩詰め。でも、▲2三歩不成なら△1一玉に▲1二歩と打てるのね。△同玉に▲3二竜で詰みと。

図巧には飛車不成が二回ある詰将棋もあるし、今では数十回も不成が入る作品もあるとか。 ……アタシもそこまでいくと、別世界に感じるなぁ。

 

 

・合い駒問題

 

飛車、角、香車を離して打つと玉方が合い駒を打つ可能性があるんやけど、これもまた難しいのね。

打つ駒によって、後の展開が大きく変わったりするから「どの合い駒が正しいのか」を考えなきゃいけないのよ。  これなんかもそうだけど、週刊少年ジャンプのマンガに載ったから有名かな。 元は「大道詰将棋」って言って、お金を払って解けたら金品がもらえるって仕組みだったらしい。縁日の型抜きみたいなやつね。

 

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他でも解説されてるみたいやけれど、▲2九香の王手に△2三銀と打つのが最善の応手。 「中合い」という合い駒の手筋で、▲同香不成は△1二玉で不詰め。香車が邪魔になってしまうんやな。 だから▲2二歩△1一玉▲1二歩と進むんやけど、ここで△同銀と取れるのが銀を選択した効果ね。他の駒だと△同玉から早く詰むのよ。

 

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他の合い駒は、△同玉▲2三とから早詰み。角は後述

 

▲2一歩成△同銀。もし角を使っていたら、ここで▲2二とまでの早詰み。 あとは歩を使って詰むのだけれど、銀しか使えないことが分かってくれたかな?

こういう、先の変化を読みながら最善の合い駒を考えないとアカンから大変なのね。 ……もちろん、創る方も大変なんやけどね。

 

代表的な筋はこれくらいかな。今度は、特徴的な詰将棋を解説していきますっ!

……ちょっと難しいから、「こんなものもあるんだ~」くらいでいいからね。

 

 

・煙詰

 

駒を39枚(攻め方の玉以外)盤に配置して、最後の詰み上がりのときに盤上に残る駒は3枚だけ(玉と、詰ます駒2枚)という詰将棋ね。他は全部、玉方の持ち駒になっているわけ。駒が煙のように消えるから煙詰ね。

図巧の第99番が初出なんやけれど、まず構想からしておかしいのよ。 「39枚の駒を置いて、36枚捨てる」って発想も、それを実現することも普通はありえないのね。…芸術作品の領域ですわ。

 将棋図巧第99番

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詰め上がり図(右)では、3枚残して全て盤から消えている。

 

実際、煙詰の2号局は1954年発表なので、図巧が献上された1755年から約200年掛かってます。それくらい、作るのが難しい詰将棋なのよ!

 

浦野八段はこの煙詰を創って、素晴らしい詰将棋に送られる「看寿賞」を受賞しています。 対局でいうところの「名局賞」みたいなものね。

 

 

・実戦形詰将棋

 

実戦に出てきそうな形を詰将棋に織り込んだものね。

矢倉に囲われた玉とか、美濃とか、穴熊なんてのもあります!

その中でも秀逸なのが「玉方実戦初形」と「攻め方実戦初形」です。

これは駒を本将棋の初期配置に限定する…というものね。ここで問題になるのが、

「詰みに関わる駒しか置けない」

というルール。つまり、玉方実戦初形ならば1一の香車から9一の香車まで、全部に意味がないといけないわけ。 図巧の第97番はそれを目指したものだけれど、完全ではないのよね。かなり苦心した配置になっていますし。

 将棋図巧第97番

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1段目は初形だが、飛角や歩は置ききれていない。

 

完全な作品は1981年の神戸新聞に発表されました。作成者は内藤國雄九段。

内藤國雄九段の「図式百番」という詰将棋集があるんやけれど、その第98番、第99番は「玉方実戦初形」と「攻め方実戦初形」になってますね。内藤先生の本に載ってるからここには上げへんけど、興味があったら買うのもありかもね。手順だけでもすごいから。

この2作を作ったことが評価されて、「看寿賞」の特別賞を受賞しています。

 

 

・無仕掛け

 

盤上に、攻め方の駒が一枚も無いものね。

大駒や桂馬で詰ます足掛かりを作るんやけど、捨て駒から入る問題や合い駒問題も多くて難しいのよ。谷川九段は作成も得意だったはず。あの人も詰む詰まないの読みがすごいからなぁ…。

で、玉方の守り駒も無い「裸玉」というのもあるのね。まず、これで詰将棋になるという発想を持つこと自体、一般人のアタシには理解できんわ。

初出はやっぱり将棋図巧から。 何で最高傑作と名高いか、ここまでくると分かってもらえるかな?

その第98番。

 

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その後作成された完全な裸玉の第2号は1942年だから、こっちも約190年掛かってるわけで、江戸時代に思いつくこと自体が恐ろしい…。

 

次で、紹介は最後にしようかな。

 

 

・長手数

 

詰将棋はどれだけ長くできるか」というのも昔からのテーマなんやけれど、根本的な問題があるのね。

 

盤面って、81マスしかないのよ。

 

つまり、1マスずつ玉が移動したとしても、160手かそこらしか掛からないわけ。

守り駒でも攻防にも限界があるから、これ以上長くするには同じ地点を繰り返し移動させる必要があるのね。しかも、同一局面にはできない…。

長い間、最長記録だったのが将棋図巧第100番「寿」。更新されたのが1955年ね。

伊藤看寿は、第98番「裸玉」第99番「煙詰」第100番「寿」と、約200年越えられない壁として存在し続けた作品を3つも創ったわけ。…スケールが大きすぎてわけがわからんわ!

 将棋図巧第100番「寿」

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手数は611手!竜で追いかけながら、持ち駒が僅かずつ変化していく「持駒変換」という技法や盤の駒を消していく「置駒消去」という手筋もある。そうやって似て非なる局面を繰り返しながら、詰みまで持っていくというわけ。

…一応言っておくけれど、これを変化含めて全部人力で読まないといけないのよ。江戸時代にソフトはないし、今のソフトですら全部読み切るのは難しい。 作成は人力だしね。

 

今の最長記録は、1986年の橋本孝治さんの「ミクロコスモス」ね。

手数は1525手!30年経った今でも不滅の記録ですわ。

 

これも似たような局面の繰り返しで手数を長くしているのだけど、新たな筋がいくつかあるのね。少しだけ紹介。

 

「知恵の輪」

 

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こんな感じで、と金を配置すると、▲2一と左△3二玉▲3一と左△4二玉▲4一と右△3二玉▲3一と右△2二玉みたいに玉を自由に誘導できるのね。これで、右に左に玉を移動させて駒の配置を変えていくわけ。

 

「馬鋸」

 

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 玉が横に移動すると、馬も王手しながら鋸のように近づいていく。

 

9九の馬が8九~8八~7八~7七…と王手を掛けながら移動していく指し方で、少しずつ馬が近づいていくことになるのよ。

「ミクロコスモス」では、9九から6六まで移動させて、最後に馬を活用して詰まし上げます!

手数を数えるだけでも一苦労ね。最初、制作者の人も手数を数え間違えていたとか…。

 

 

 

こんな感じで有名なものを取り上げてきたけれど、正直なところ、詰将棋の創作ってなかなか「報われない」のよ。

これだけすごい詰将棋を創っても広く知れ渡る世界じゃないし、本がベストセラーになるわけでもない。

浦野八段の本は有名やけど…あれは商売上手というのが大きいかな。

 

それでも詰将棋に取り組む人がいるのは、利益とかを度外視した魅力がそこにあるからなんやろね。

 

もちろん終盤力を鍛えるという面でも詰将棋は非常に有効ですよ。

アマチュアで強くなりたい人は、短手数でいいから脳内で駒を動かして詰ます練習をするといいと思うわけです。

ただ、突き詰めていくと別世界が広がっているのが詰将棋…ということが分かってもらえたら、アタシも解説したかいがあるってもんですわ!

 

ここには示さないけれど紹介した作品の手順も素晴らしいし、他の詰将棋もすごいのが沢山あるから、興味を持ったらぜひ調べたり、読んだりしてね。

 

 

 

…なんや、詰将棋選手権で13歳の藤井三段が活躍しているらしいですねぇ。

アタシより2歳下なんですけれど、世界は広いなぁ……。

 

 

(了)

 

参考作品

将棋図巧(伊藤看寿) 第97番、98番、99番、100番

 

図式百番(内藤國雄) 第98番、99番

 

ミクロコスモス(橋本孝治)

 

※不成のところにある2題はPちゃん作ね。

 

立ち絵 藻P